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睡眠時無呼吸症候群とは
「いびきがうるさい」
「寝ている時に呼吸が止まっている」
家族や旅先で同室だった友人から言われたことがある方は注意が必要です。
本人は気づきませんが、いびきを侮ってはいけません。
いびきとは
いびきとは、狭くなった呼吸の道を空気が無理に通ろうとする際に生じる音です。
さらに呼吸の道が狭くなると睡眠中に何度の呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」になります。
無呼吸状態を何十回も繰り返していることもあり、いわば眠っている間に誰かに口と鼻を何十回も塞がれているのと同じ状態です。
この状態で熟睡できるわけもなく、日中の眠気を招きます。電車事故の原因となっていたことも話題となりました。
最近の研究では、心疾患(心筋梗塞)、脳疾患、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなど、様々な生活習慣病を併発したり、時に突然死の原因となることも分かってきました。
症状チェック
以下の状況での眠気を0~3点で評価してみてください。
●0点=決して眠くならない ●1点=ときに眠くなる ●2点=しばしば眠くなる ●3点=眠くなることが多い
□テレビをみているとき
□公の場で座って何もしないとき(劇場や会議など)
□1時間続けて車に乗せてもらってるとき
□座って人と話をしているとき
□昼食後、静かに座っているとき
□座って手紙や書類などを書いているとき
結果
◎5点未満/日中の眠気少ない…問題ありません◎5~12点/日中の軽度の眠気あり…概ね問題ないですが、気がかりでしたら一度ご相談ください
◎13点以上/日中の強い眠気あり…検査をお勧めします。
睡眠時無呼吸の原因
◎飲酒・喫煙
◎下あごが小さい
◎扁桃腺肥大・アデノイド肥大
◎睡眠薬や精神安定剤を飲んでいる(気道の筋力を低下させ気道を狭くします)
検査
写真のような機械を手首につけ、指先とお鼻にモニターを装着します。
一晩検査キットを装着して寝ていただくことで、睡眠中の血液中酸素飽和度、脈拍、呼吸運動などを記録します。後日装置を返却いただき、データを解析することで、無呼吸の程度から治療の必要性を検討します。
治療
圧をかけることで気道が狭くなることを防ぎます。
受診時に睡眠時のデータを確認し、現状の説明や必要があれば機械の調整を行います。
いびきや無呼吸が軽度の場合に適応となることが多い治療法です。
◎扁桃腺が大きい⇒口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除 ◎鼻が狭い⇒鼻中隔矯正術
◎のどが狭い⇒軟口蓋形成術
※マウスピースや手術加療が必要と考えられる場合は適切な病院にご紹介させていただくことがあります
こどもの睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、成人の病気としてよく知られていますが、子どもは見過ごされることが多いようです。良い睡眠は健康維持には欠かせませんが、特に子どもは成長や発達に大きな影響をもたらすため、見逃さないことが大切です。
子どものSASについては、個人差はありますが2~6歳に多く見られます。
2~6歳の時期は、ちょうど扁桃組織の肥大と、心身の発達の時期が重なります。ただし、アレルギー性鼻炎や肥満なども原因となるため、子どもでも幅広い年齢に起こります。
現状、子どものSASは、新生児から小学生までの子どもの1%~3%とされていますが、潜在患者も多いといわれているため、注意が必要です。
こどもの睡眠時無呼吸症の影響
◎睡眠時の症状
- ・大きないびきを繰り返す
- ・呼吸が数秒間止まる
- ・眠りが浅く、何度も起きる
- ・座ったまま寝るなど変な寝姿勢
- ・陥没呼吸(呼吸時にみぞおちがペコペコへこむ)
- ・咳き込む
- ・寝汗、夜尿
◎起床時の症状
- ・寝起きが悪い
- ・不機嫌
- ・口が渇いている
- ・頭痛
◎日常生活での症状
- ・鼻がいつもつまっている
- ・口呼吸
- ・アデノイド顔貌(口を開けて舌を突き出した顔つき)
- ・長時間の昼寝、幼稚園や学校での居眠り
- ・食欲の低下
- ・イライラして怒りっぽい
- ・集中力の低下
子どもの無呼吸の原因
●扁桃肥大、アデノイド肥大
最も多い原因です。
口のなかから見える扁桃(口蓋扁桃)と鼻の一番奥にあるアデノイド(咽頭扁桃)が大きいことにより呼吸の道が狭くなることによって無呼吸やいびきの原因となります。
図のように幼小児期に扁桃・アデノイドは肥大し、成長とともに退縮していきます。
●アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎
近年、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎が子どもに増加しています。長びく鼻水・鼻づまりは、副鼻腔炎(蓄膿症)の原因にもなります。
●肥満
子どもの生活習慣病も増加し、肥満により気道が狭くなりやすいことも指摘されています。 花粉症と同じく小児に増えているため、今後、小児の無呼吸症候群の患者も増えるのではないかと考えられています。
●小顎症
特に日本人では顎が小さい方が多く、それによる無呼吸の割合が多いとも言われています。
顎が小さいことで舌が奥に落ち込みやすく気道が狭くなってしまいます。
検査について
まずは診察で無呼吸の原因となるようなアレルギー性鼻炎や扁桃肥大がないかチェックします。
必要時は直径2.4ミリの極細ファイバースコープやレントゲンでの検査で、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大など原因を探ります。
●検査
無呼吸の診断については成人と同様、PSG(ポリソムノグラフィー)検査を行います。
自宅で一晩検査機械を装着して眠ることで、無呼吸やいびきの状態、血液中の酸素量などを測定できますが、どうしても機械をつけると眠れなかったり、途中で外してしまうこともあります。
その場合は病院で一泊して検査を行う方法もありますので、検査可能な病院に紹介させていただくこともあります。
どうしても検査が難しい場合、睡眠時の様子をビデオで撮影していただき、顔から、お腹の状態まで撮影して、吸気時に非常に苦しそうではないか、上気道の閉塞が疑われるような呼吸がないかなど、よく観察したうえで治療の判断を行うこともあります。
●診断基準
睡眠時無呼吸症候群は、成人と小児では診断の基準が異なります。
成人の場合
「10秒以上の呼吸停止が、1晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または1時間に5回以上ある」とされています。
小児の場合
「無呼吸時間が10秒に至らなくても、2呼吸分の呼吸停止があれば無呼吸と診断できる」とされています。
簡単に言うと、1回の呼吸が5秒であれば、10秒息が止まっていれば無呼吸と診断できるということです。
また、検査における重症度分類も成人とは異なり、AHI:1~5が軽症、AHI:5~10が中等症、AHI:10以上が重症となります。
(AHI:Apnea Hypopnea Index 無呼吸低呼吸指数)
治療について
●保存的治療
近年では抗ロイコトリエン薬(アレルギーの薬の一種)やステロイド点鼻薬によるアデノイド・口蓋扁桃への縮小につながる可能性が注目されています。
検査の結果無呼吸が軽症で鼻閉などが原因の場合は、点鼻薬や飲み薬による治療で症状を軽減し、経過観察することも多いです。
また、顎が小さいことが原因であれば、矯正歯科にお願いして顎を広げる治療もあります。横向き枕を使用した寝方の指導だけで十分な場合もあります。肥満がある場合は減量に取り組みます。
重症の際は、成人と同様鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって呼吸を楽にする「CPAP:シーパップ(経鼻的持続陽圧呼吸療法)」という方法もあります。一部のメーカーのCPAPは小児に対応したマスクもあります。しかしこれらは、長期間の治療が必要であり、実際に子どもでCPAPを選択することはほとんどありません。重症度により医師と相談の上、手術も含めた治療法を選択します。
●外科的治療(手術)
保存療法では効果が無く、いびきや他の症状を繰り返す場合、「アデノイド切除術」「口蓋扁桃摘出術」を検討します。
手術は全身麻酔で行われ、手術時間は1時間以内のことが多いですが術後約1週間の入院を要することになります。手術後はほとんどが大きく改善するため、扁桃・アデノイドが小さくなるのを待たずに手術を行う場合もあります。年齢的には扁桃・アデノイドが大きくなる4~6歳で手術することが多いです。
いずれにせよ、小児睡眠時無呼吸症候群は、放置すれば成長・発達に障害が出る可能性が高いため、早期の診断、治療が大切です。
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