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Posted:2016.06.30 | Category: 医療系のお話
もう7月。今年も半分が過ぎました。
今週も大雨続きですが、本日ようやく晴れ間がのぞきました。
ただここ最近の夜間の冷え込みやエアコンの影響もあってか、のどの痛みで受診される方が増えている印象です。
咳の原因4回目ですが、一応このシリーズは今回で一区切りとなります。
薬剤性咳嗽
特に有名なのがACE阻害薬という薬です。
高血圧に対して血圧を下げる薬(降圧薬)なのですが、気道を刺激する物質が増えてしまい、咳が生じます。
咳が強い場合は薬剤の中止や変更を検討しますが、必要があって内服しているお薬ですので、ご自分の判断で中止はしてはいけません。
必ず処方を受けているかかりつけに相談してください。
また、この咳の特徴は痰がからまない「空咳」ということです。
痰がからむ場合は感染症、さらに水っぽい咳は心不全の症状である可能性もあります。
また、一部の薬の副作用に間質性肺炎という特殊な肺炎が副作用としてあります。
抗がん剤や肝炎に使用するインターフェロン、リウマチの薬などが有名ですが、この場合の症状は息切れ(呼吸困難)、空咳で重篤な状態になることもあります。
気道異物
特に3歳までの小児で問題になります。
身の回りのものを口に持っていってしまいその異物が気道に入り込んでしまうことがあります。特に急激な咳の原因となるのは異物が喉頭~下気道(気管、気管支)に入ってしまった時です。
激しい咳嗽、喘鳴(ひゅーひゅー、ぜーぜー)、声が出せないなどの症状を起こし、窒息の危険性もあります。
特に多いのがピーナッツなどの豆類です。そのほか、おもちゃ、ビニールなども多く報告されています。
まずは異物を飲み込まないように飲み込めるような大きさのものを手の届く場所に置かないことが重要です。
もしも口に入れているのを目撃した時は、怒ってはいけません。びっくりして飲み込んでしまいます。冷静に吐き出させるようにしてください。
万が一、子供が急激に咳き込んで苦しそうにしていて、異物を飲み込んだ可能性があるときは救急車を呼んでください。
日本小児呼吸器学会が作成した「小児の気道異物事故予防ならびに対応」というパンフレットがあります。非常にわかりやすく、まとめてありますので、どうぞ一読ください。
(http://jspp1969.umin.jp/ind_img/cc03.pdf)
百日咳
百日咳菌という細菌の感染によって起こります。
3種混合、4種混合ワクチンに含まれており、予防することが可能ですが、脳症や痙攣を起こすこともあり、特に赤ちゃんにとっては非常に怖い病気です。
特徴的なのはまずは短い咳(コン、コン、エホ、エホ)が連続で出ます。
続いて、息を吸い込むときに「ヒュー」という音が聞こえます。
「発作性けいれん性咳嗽」といいますが、赤ちゃんの場合は聞き取ることが困難になります。また、全員にみられるわけでもありません。
診断は血液検査で百日咳に対する抗体を調べます。しかし、感染の時期によっては検査結果がでないことがあります。
・2週間以上激しい咳が続く(嘔吐を伴う、顔を真っ赤にする)
・周りに百日咳と診断された人がいる
などの状況によって検査を行います。
治療は抗生剤(マクロライド系抗生剤)を使用します。
咳止めは効果がありません。
これまで4回に分けて咳の原因について書いてきましたが、頻度が高い原因については概ね書けたかと思います。
もちろん書いた以外にも肺の病気(肺がん、肺炎など)もたくさんあります。
咳止めは市販薬にもありますが、原因がわからないままに咳止めを使うとかえって状態を悪くする可能性もあります。
咳は誰にでも起こる症状ではありますが、良眠を妨げ、お仕事にも影響が大きい症状です。
早く治すためにもしっかりとした診断を受けましょう。
副院長です。
6月23日、24日に鹿児島で開催されました第78回耳鼻咽喉科臨床学会総会・学術講演会に参加してきました。
鹿児島らしいポスターです。
この学会は学会名の通り、臨床に関係する発表や報告が集まっており、診療にすぐに役立つような最新の知識を学べ、大変有意義な出張でした。
また、スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法について講習も受けることができました。
舌下免疫療法は講習を受け、さらにweb上で試験をパスしなければお薬を処方することはできません。
当院はすでに院長が講習も試験も受けておりますので、処方可能ですが、私もやっと講習を受けることができました。
そのほかにも面白く、興味深い話題がたくさんありましたが、一つだけ紹介します。
「納豆が副鼻腔炎が治る!?」
副鼻腔炎といっても特に治療が困難な好酸球性副鼻腔炎に納豆の成分である納豆キナーゼが治療効果があるかもしれないという話題です。
あくまでもまだ研究の段階ですが、納豆キナーゼという成分に期待が寄せられているそうです。
好酸球性副鼻腔炎は難病指定もされるほど治療が難しい病気です。手術をしてお薬を使用しても再発する可能性が高く、何度も手術を受けなくてはならないこともあります。
納豆キナーゼは普通にサプリメントとして販売されていますから、効果があることを期待したいですね!
会場の噴水が上がっているところを撮影したのですが、タイミング悪い、、、
Posted:2016.06.22 | Category: 医療系のお話
今週から受付の隅っこに登場しました、カエル君と紫陽花の風鈴。涼しい音を鳴らしてくれます。
地震から2か月が経過しましたが、今度は大雨が続いております。
いまだに生活が落ち着かず、心身とも疲れ切ってしまっている方々も多いのではないでしょうか。体調にはくれぐれもお気を付けください。
さて、題名の通り、咳の原因シリーズ3回目です。
1、 胃食道逆流症
胃酸が胃から食道へ逆流し、さまざまな合併症を引き起こすものを「胃食道逆流症(GERD)」といいます。
逆流性食道炎という名前は有名です。
食道なので咳とは関係なく思えますが、逆流した胃酸が食道粘膜を刺激し、その刺激が気管の刺激として咳を引き起こす(迷走神経反射)という説。もしくは胃酸が直接気管内にまで入り込んで咳が出る(誤嚥)という説があります。
いずれにせよ胸焼け、呑酸(酸っぱい液体があがってくる感じ)などの症状があり、咳でお困りの方は逆流による咳の可能性があります。
会話、上半身の前屈、体重増加などで咳が悪化するのも特徴です。
咳だけでなく、のどの痛みや違和感を起こすこともありますし、喉頭肉芽腫といって声帯に炎症によるできものができて声が出にくくなることもあります。
治療
PPI(プロトンポンプ阻害剤)、H2ブロッカーという薬剤を使用します。どちらも胃酸を抑えるお薬です。
また、普段の生活でも胃酸の逆流を防ぐことが重要です。
・アルコールやコーヒー(カフェイン)の摂取を控える。
・仕事中など、前かがみの姿勢を避ける。
・食後3時間程度は横になるのを控える。夕食が遅くなりがちな方は要注意です。
2、 かぜ症候群後遷延性咳嗽
簡単に言うと風邪をひいた後に咳が続いてしまう状態です。
風邪によりのどの咳反射を起こす部分が過敏になってしまうことが原因とされ、風邪をひいた1~2割程度に起こるといわれています。
治療
鎮咳薬(咳止め)、抗アレルギー薬、漢方薬などを使用して比較的速やかに改善することが多いです。
逆に、改善が得られなければ他の疾患を考えなくてはなりません。
3、 心因性・習慣性の咳
その名のとおり、精神的な影響から咳が続く状態です。ストレスが多かったり、環境や季節の変化によっても咳がでることがあります。
もちろんレントゲンや呼吸機能検査には異常ありません。
特徴として、緊張した状態や、日中は咳が出ることは多いのですが、逆になにかに熱中している時や寝ているときには症状はありません。
咳自体は大きな音がする犬が吠えるような咳であったり、キンキンするような咳が多いとされています。
治療
咳止めは効果がありません。
原因となっているストレスの解消が治療になります。
実は子供にも意外と多く、学校生活などが問題になっているかもしれません。
「学校に行きたくないから咳をする」ということもあります。
不眠症が同時に起きていることもあり、良眠を得ることが治療になると思われるときには安定剤を使用したりもします。
長くなってしまいましたが、今回までである程度頻度が多い病気は網羅したかと思います。
次回で一旦このシリーズは終了の予定です。
なにか知りたい病気のことなどリクエストがあれば、受診の際でも構いませんので、どうぞおっしゃって下さい。
ちなみに、先週から看護スタッフの制服も夏らしく変わっております。
(撮影は拒否されました)
Posted:2016.06.18 | Category: お知らせ
Posted:2016.06.17 | Category: 医療系のお話
しばらく暑い日々が続いていましたが、今度は雨が続き梅雨らしい天候になってきました。
既にお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、地震前後で当院のプレイルーム前にある本棚には100冊以上新しい本が加わっております。(地震で一度ほぼ全部落下しましたが、、、)
ちゃんと片付いてないときの画像ですいません。
さて、今回は喉頭アレルギーについて。特に咳喘息について書きます。
1、咳喘息
聞き慣れない病気かもしれませんが、長引く咳の中では非常に多い病気です。
一般的に言われる喘息(気管支喘息)とは違い、喘鳴(息を吐くときのヒューヒュー、ぜーぜー音)や息苦しさはありません。レントゲンや呼吸の機能も正常です。
アレルギー性(好酸球性)の気管支炎で、女性にやや多く、気管支拡張薬に効果があるのが特徴です。
症状
のどのイガイガ感、もやもや感、違和感が強く咳がでます。
特に起床時、就寝時に起こることが多く、通常は痰はなく、息苦しさもありません。
ただし、無治療で放置すると気管支喘息に移行することもありますので、しっかりと治療をすることが重要となります。
診断
症状、生活・職場環境などを参考とし、喉頭の所見をみて診断します。
また、治療に使用する気管支拡張薬の効果も診断の助けとなります。
治療
アレルギーに対して抗アレルギー剤、気管支拡張剤およびステロイド剤を使用します。ステロイド剤は吸入薬を用いますが、局所の真菌症(カビ)を起こすこともあり、使用後のうがいが大切です。
ホコリやダニなどのハウスダスト、温度の変化(冷暖房など)、おしゃべりのし過ぎ、受動喫煙などが誘因となります。
アレルギー性鼻炎と同じく寝室などの家ダニ対策が大事で、犬猫などのペットや観葉植物なども考慮しなくてはなりません。
熱い味噌汁やお茶も温度の変化として引き金となりやすく、運動や会話中に咳が出て、いったんでると止まりにくい状態になることもあります。
2、アトピー咳嗽
のどのイガイガ感と夜間の咳が症状で、咳喘息と似たような状態ですが、気管支拡張剤が効きません。
ただし、気管支喘息への移行はありません。
治療には抗ヒスタミン剤や、やはりステロイドの吸入薬を使用します。
長引く咳は安眠の妨げとなり、お仕事や勉強にも悪影響を及ぼします。
咳喘息もアトピー咳嗽もあまり一般にはあまり聞かない病気ですが、実は多い病気です。症状に心当たりがあれば、一度ご相談ください。
Posted:2016.06.09 | Category: 医療系のお話
雨も多く、蒸し暑い日が続いています。
今回から前回にも書きましたように咳の原因について一つ一つ書いていきます。
咳の話ですが、いきなり鼻の病気からです。
鼻は呼吸の入り口で、吸った空気(吸気)に湿気を加えたり、温めたり、異物を除去したり、匂いを感じる場所です。
副鼻腔とは鼻腔からつながる空洞で
①上顎洞(目の下)
②前頭洞(おでこ)
③篩骨洞(目と目の間)
④蝶形洞(篩骨洞の奥)
以上の4つからなります。
その働きは、「表面積を広くし、鼻の機能を高めている。」「頭部を球形に近づけることで外力に強くする。」「空洞化により軽量となり頸椎への負担を軽くしている。」などなど諸説あります。
その副鼻腔に炎症(膿が溜まる)が起こった状態が副鼻腔炎(蓄膿症)です。
症状
鼻閉(鼻がつまる)、鼻汁(ねばねばした黄色い鼻水)、頭痛(頭が重い感じ)、嗅覚障害(においがしにくい、くさい臭いがする)などがあげられます。
そして鼻水がのどに流れる(後鼻漏)を来すことがあるのです。
この後鼻漏が急性・慢性の喉頭炎、気管支炎を引き起こしたり、または直接喉頭・気管を刺激することで咳の原因となります。
就寝時や起床時に症状がでやすく、慢性呼吸器疾患(慢性気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎など)の一因となることもあります。
診断
鼻の中の診察、レントゲン撮影、必要時はCT検査まで行います。
治療
抗生剤や去痰剤を使用します。
また、特殊な治療法にマクロライド少量長期投与という方法があります。マクロライド系といわれる抗生剤を通常の半分の量で長期間(3~4か月)内服していただく方法で、長い時間がかかりますが、副作用も少なく、呼吸器内科でもCOPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)などでも行われます。
ただし、薬だけで治らなかったり、鼻ポリープ(鼻茸)の合併や特殊な副鼻腔炎(真菌症など)では手術を要することもあります。
咳が続く方の中でも特に痰が多かったり、鼻詰まりがある方は副鼻腔炎の可能性もあります。
炎症が強くなると痛みが強くなり、場合によっては目や脳にまで炎症が波及することもある病気です。
症状が強くなる前に受診をお願いします。
前回紹介しましたポケットティッシュは受付と診察室に置いています。
必要な方はどうぞご自由にお持ち下さい。
Posted:2016.05.31 | Category: 医療系のお話
咳の原因となる病気には
A 上気道 (鼻・口から喉頭声帯の付近まで)
①副鼻腔炎(後鼻漏)
②のどの炎症
③のどのアレルギー 咳喘息、アトピー咳など
B 下気道 (気管 気管支 肺)
①気管 喘息、腫瘍、異物
炎症(細菌、ウイルス、特殊な炎症)
②肺 炎症(一般細菌、結核性、特殊な炎症(マイコプラズマ肺炎、百日咳など)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
腫瘍
C 消化器
逆流性食道炎
D 薬剤誘発性の咳
高血圧の薬など
(咳の一因になっても、血圧の管理に必要なこともあります。自己判断で薬を止めないようにしてください)
E 気道異物による咳
特に幼小児(ピーナッツなどの豆類が最多)
F かぜ症候群後遷延性咳嗽
G 心因性・習慣性の咳
以上のように、おおまかに書いても様々な原因があります。
せきの状況、その期間、時間帯、季節性、痰の有無などを参考に診察します。
耳鼻科の専門は主に「A」の原因ですが、「B」以下の事柄に注意し、必要であれば呼吸器内科への対診も行い診断・治療を行います。
次回より、特に耳鼻科で扱う原因疾患について細かく書いていきます。
画像は今回作成しましたポケットティッシュです。
可愛くできました。
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