たかむら耳鼻咽喉科

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医療系のお話の記事一覧

Posted:2020.09.08 | Category: 医療系のお話

shizensaigai_typhoon.png

台風10号が過ぎ去りました。

想定よりも勢力は弱まったようですが、各地で怪我や停電などの被害が報告されています。

幸いなことに当院はスタッフやその家族も含め被害はなく一安心しました。



台風に絡めて題名の話題について。


台風が来ると喘息の発作が起こる


こういった訴えをされる方、結構いらっしゃいます。


では、本当にそんなことがあるのでしょうか?


まず、気圧が関係するという説があります。
気圧は体調と関係することは以前に書きました。
(⇒2017年10月26日のブログ『気圧の変化と体調』


しかし、喘息(アレルギー)が悪化するのには別の要因が強いという説もあります。

様々な論文でも発表されていますが、気圧よりも温度や湿度の大きな変化の方が影響が大きいようです。


さらに、もう一つ考えられる原因があります。

雷雨によって花粉などのアレルギー物質が巻き上げられ細かくなってちらばり気管支まで吸い込まれやすくなるのではという説です。

普通の花粉であれば粒子が大きく、喘息の悪化原因にはなりにくいのですが、細かくなるので肺の奥まで入り込んでしまうということです。


この現象を『雷雨喘息』と呼びます。


英語にすると"Thunderstorm-asthma"。


サンダーストーム・アズマ


響きだけだと何だかカッコいい感じもしますが、海外では何千人もの患者さんが数時間の間に喘息発作を起こした例もあるようです。


ちなみに喘息は英語でAsthma(アズマ)ですが、日本語で雷は『あずま』とも読みます。
関係ないんですけど、この辺もなんだか縁を感じる喘息と雷雨ですね(^-^;

Posted:2020.09.03 | Category: 医療系のお話

以前にマスクの使い方については書きましたが、最近興味深いデータを見ましたので今回はマスクの選び方についてです。


皆さん、マスクを購入するときに何か基準はありますか?
価格も気になるし、ヒモが痛くないかということを重視する方もいるでしょうし、見た目も気になるでしょう。


でも一番大事なのは、『本当に感染対策になるかどうか』ですよね。

すでにYahooニュースなどでも結構取り上げられていて、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが。

様々な種類のマスクで、『実際にどの程度飛沫が飛ぶのを抑えられるのか』ということを調べた研究が発表されました。
実際の論文はコチラ⇓

『Low-cost measurement of facemask efficacy for fitering expelled droplets during speech』

いろんな素材のマスクをしながら喋っているところにレーザーを当てて飛沫を観察しています。
それをなんとスマホのカメラで撮影し、コンピューターで解析したようです。


この様子はYou tubeにも投稿されており、すでに再生数は30万回近くになっています。
動画は『Inexpensive way to test face mask effectiveness in reducing COVID-19 transmission』という題名です。



さて、その結果です。

F3.large.jpg
(論文より引用)

横軸はマスクの種類、縦軸は飛沫の数です。

もっとも飛沫の数が少なくなったのが、やはりN95マスクです。99.9%の飛沫が抑えられたということ。

その次はサージカルマスク。普段私も使用していますが、これもやはり効果が高いようです。

布のマスクでもある程度効果があるようですね。


逆にニット素材やバンダナは効果が低い
まぁそりゃそうでしょう。


右から2番目の『None』がマスクをしない状態ですので、一つだけ、マスクをしないよりも悪い結果のものがあります。

『Neck Gaiter』と書かれていますが、ネックゲートルってやつですね。
これフリース素材のようですが、どうやら大きな飛沫を細かくしてしまい、飛沫の数が増えると考えられています。

なので、どちらかというとネックゲートルの形状より素材が問題のような気もします。



N95マスクはやはり素晴らしい性能なのですが、これを普段から使用するのは現実的ではありません。
貴重な医療資源ですし、もちろん価格も高いですし。
N95ってめちゃくちゃ暑いですし(^-^;


あと『Valved N95』ってありますけど、日本語にすると『排気弁付きN95マスク』になると思います。
これ、気密性を高めたN95にわざわざ排気弁をつけているわけで、何が目的なんでしょう。
当然、排気するためのものなので、せっかくのN95が普通の布マスクレベルまで飛沫を飛ばすことになってます。

呼吸はしやすくなるでしょうけど(*_*;



というわけで、興味深いマスクの研究のご紹介でした。
普通のマスクであればある程度の感染対策になりそうです。
マスク選びの参考にしてください。



最後に、この研究マスクをしながら喋っているのですがその内容が良いですね。

Stay healthy, people


Posted:2020.08.24 | Category: 医療系のお話

昨日は日曜日ですが、朝からZoomで新型コロナ感染症の勉強会に参加。

DSC_3826.JPG
(他の参加者も写っているので、モザイクかけてます)

実際に新型コロナの治療をバリバリされている方のお話はやはり勉強になります。

感染予防のために
・飛沫、エアロゾル感染
マスク換気
・接触感染
手指衛生環境消毒

基本ですが、やはり大事。

勉強会の中で話題になったものをいくつか紹介します。


つけっぱなしの手袋
最近スーパーのレジ打ちされている方などでよく見ますね。
あれって自分もあまり好ましくないと思っていたのですが、『手袋=清潔』ではありません
当たり前ですが、手袋をしていても手袋が汚れたら不潔です。
なので、本当に手袋を感染予防に使うなら、例えばスーパーのレジ打ちならお客さん毎に手袋交換が理想です。
ただ、それは資源的にも難しいと思うので、手袋ではなくお客さん毎にアルコールなどで手指消毒する方がいいと思います。
アルコールによる手荒れが気になる方は手袋の上から手指消毒でもいいと思います。

さらに手袋つけっぱなしの場合、手袋の中で菌は増殖しますので、脱ぎたての手は非常に汚いです。



空間除菌(?)
例えばウィルスに有効な薬品を空気中に散布したとして、それが本当に感染予防になるのか?
今回の勉強会では簡単に説明されていました。
特に換気をしている場合は空気中の薬品も流されていきますので、有効な濃度を保つことはできなくなります。
換気をせずに密閉された空間で有効な濃度を保つと人体に有害になってしまいます。
特にくしゃみや咳で飛ぶ飛沫なんか、あっという間に飛びますから。その瞬間にウィルスを不活化するなんて難しいですよね。

空間を除菌(除ウィルス?)するよりも環境消毒が大事。
(よく触るものを消毒液で拭いたり、消毒液に漬けたり)




もう8月も終わりに近づき、寒くなってくるとインフルエンザとの関連も気になってきます。こういった勉強会はなるべく参加して少しでも院内にフィードバックしていければと思います。

Posted:2020.08.07 | Category: 医療系のお話

8月7日は『鼻の日』です。
毎年毎年この日をネタにしてブログを書いているのですが、特に最新の鼻の話題ってないなぁ...

まぁ去年も鼻の日に耳の話を書いたのですが(^-^;

というわけで、話題のポビドンヨード(イソジン)を無理矢理鼻の話に繋げてみます



ポピドンヨード入りのうがい薬でうがいをすると、新型コロナ感染症のPCR検査で陰性化するのが早かったという発表を受けすでに様々なSNSなどで批判を浴びました。
早急に訂正されましたが、大きな問題点として


・『うがいする人』と『うがいしない人』だけでなく、例えば『水でうがいする人』などとも比較するべき
・検査には唾液採取によるPCR検査をしているが、鼻から採取する検査でも同じような結果になるか検討するべき

などが挙げられます。
単純に口の中のウィルスを洗い流したから検査ででなくなったんじゃ?ということですね。


海外でポビドンヨードが新型コロナに有効かも?というデータもあり、今後有効性が確認される可能性もなくはないです。
まだまだ不完全なデータの状態で大々的に発表してしまったのが失敗かと思います。



それによりすでにドラッグストアなどでポピドンヨード入りのうがい薬が売り切れ続出しているようです。
心配なのが、ヨード過剰摂取による甲状腺機能低下
感染予防のためとポピドンヨードを飲んでしまうような人が出てこないかと危惧しています。



そういえば以前にうがいの予防について書いたことがありました。
(⇒2017年12月11日のブログ『インフルエンザの感染予防』

すでに3年近く前のブログですが、なんだか今読むと良い感じですね(自画自賛)。






あれ?...鼻の話につながらない(-.-)





現在の医療でポピドンヨードを使用する場面はなんといっても手術前の術野の消毒でしょう。
(手術部位などにより違うものを使う場合もあります)

昔の耳鼻科ではのどが痛くて受診するとのどにイソジン(ルゴール)塗ったりされていましたが、最近はそんなことする耳鼻科医はいないはず。



外科手術の時の消毒では、見たことない方の想像のおそらく数倍は消毒液を使います。
かなりビチャビチャに塗ります。
MOCO'Sキッチンのオリーブオイルばりにビチャビチャにします(伝わるかな?)。



すでに手術のためのポビドンヨードが不足するのではないかという懸念の声もあがっています。




あ、でも鼻の手術の時は一般的にポピドンヨード使いません。

はい、見事にポビドンヨードから鼻の話につながりましたね(^_-)-☆


ポビドンヨードを鼻の中に塗ったり、点鼻などをする論文はいくつか発見できましたが、ほとんどがMRSAなどの耐性菌を除菌するという目的で、普通の副鼻腔炎なんかに凄く効くということはなさそうです。
(なので一般的な治療として広まっていません)


検索すると『イソジンで鼻うがい』とか結構でてきますが、オススメはしませんね。


無理矢理つなげて話が広がらないので今回はこの辺で(^-^;

Posted:2020.08.03 | Category: 医療系のお話

このブログで以前も書いてますが、夏風邪とは基本的にヘルパンギーナ、手足口病、プール熱(咽頭結膜熱)の3つのことを言います。

その中で手足口病について、なんと7月中旬での感染者数が去年の100分の1というニュースがありました。

もちろんその原因は感染対策がしっかりととられていることでしょう。

新型コロナウィルスと同じく、手足口病もヘルパンギーナもプール熱もウィルスが原因となります。

子ども同士の接触が減り、手洗いなどが徹底されたことの効果でしょうね(^^)


ただし油断は禁物。


natukaze202002.jpg
(熊本市HPより)

熊本市でヘルパンギーナ増えてますね。


natukaze202001.jpg
(同じく熊本市HPより)
プール熱や手足口病は増えてないようです。


ヘルパンギーナについては去年書きましたブログで詳しく書いてますので、ご参照ください。
(⇒2019年6月18日のブログ『ヘルパンギーナも流行中?』


ヘルパンギーナや手足口病での出席停止期間は厳密に決められておらず『発熱などの症状がおさまって元気になれば登校、登園OK』というものなのですが、意外と知られていないのが、感染力は2~4週間と長く続くことです。


特にご家族は子どもの便から感染する可能性があるので、オムツの扱いには注意が必要です。

子どもだけの病気じゃないことも注意してくださいね。





すっごい暑いので熱中症にもお気を付けくださいね(^^;)

Posted:2020.07.27 | Category: 医療系のお話

昨日今日と熊本で新型コロナウィルス感染が確認されたニュースが大きく取りざたされています。

東京や大阪、福岡などの状況を見ると熊本にも拡大してくることは想定していましたが、連休中に急に報告数が増えました。

普通に考えるとこれからもっと増える可能性が高いということになってしまいます。



よくニュースなどで聞く意見として、検査数が増えていることで軽症で診断される数が増えて感染者数が増えているように見えるというものがあります。
確かに第一波の時、検査体制が整わず、検査数自体が少なすぎた時期と比較して検査数が増えています。
第一波の時も実際はもっと感染者数が多かったことはまず間違いないでしょう。



さらに『感染者数は増えているが、重症者数は増えていないので心配するような状況ではない』という意見も見ます。
この考え方はちょっとどうかなぁ...と。

新型コロナウィルス感染は発症してから1週間程度経過して急激に症状が悪化することが多いと言われています。
(もちろん悪化せずにそのまま軽快する方が多いのですが)

そしてご存知のように重症化しやすいのは御高齢の方や既往症のある方です。


若い世代に広がる⇒高齢者にも広がる⇒重症者が増える

という風にタイムラグが数週間できることは予測できます。

つまり重症者が増えるのは今後。という考え方もできるわけです。
東京都が発表している重傷者数(人工呼吸管理が必要)を見るとすでに少しずつ増えてきているようにも見えます。



もちろん、少しずつ治療方法が確立されてきているという良いニュースもあります。
抗ウィルス薬のレムデシビルやデキサメサゾンというステロイドが効果があると報告されています。
今後、ワクチンの開発も含めてさらに進んでいくでしょう。



というわけで(?)

熊本でも市や県が発表している資料を見ると、現在は若い世代が感染の中心のようですが当然十分な注意が必要です。

今後も油断は禁物。『ただの風邪』のように考えてはいけません。
若い世代の方々は自分たちは重症化しないからと油断しないようにしましょう。
周りの人に感染させるリスク、そして感染が拡大すると社会・経済的に自分たちにも影響が回ってくるリスクも考えましょう。


やっぱり正しく恐れて正しく予防ですね(^^)


Posted:2020.07.20 | Category: 医療系のお話

以前からちょこちょこと書いてますが、マスクを正しく使うのは結構難しいです。

よければ以前のブログも併せてご覧ください。
(⇒2020年5月25日『2歳未満のマスク』

ここでも書いてますが、マスクを使う時に大事なことは

①しっかりと鼻から顎まで覆う
②マスクの表面には触れないようにする
③外す時もヒモの部分を持って外す

この3つでしょう。


については最近かなりしっかりされている方が多い印象です。
鼻を出した『鼻マスク』の方は少ないですね。

最近国会で感染症の専門家として熱く発言していた方が思いっきり『鼻マスク』だったのには笑ってしまいました(^^;)


これが一番難しいところだと思います。
診療するためにマスクを外していただくと、そのままポケットに...なんてこともあります。


これは②と同じようなことですが、外す時も油断しないようにしましょう(^^)
外した後に手洗いを忘れずに。



私も診療中はずっとマスクを着用しているのですが、ふと触ってしまうことがあります。

一番危険なのが、耳の診察をした後です。

DSC_1578.JPG

耳の中を見るときにはこのような顕微鏡を使用します。

ただ、マスクをしながらだと結構レンズが曇ります(*_*;
曇ると当然鼓膜の細かい所見が見えません。


鼻の横から息が漏れて曇ってしまうのですが、どんなにマスクを密着させてもなかなかゼロにはならないんです...

耳の診察中息を止めていれば大丈夫なのですが、処置が必要だったりして長くなるとそうもいきません。


というわけで顕微鏡を覗いている間だけ、あえて『鼻マスク』になっていることがあります。ご了承くださいm(__)m



マスクを少し下にずらすわけですが、手は使いません。

口と鼻をフガフガしてずらしてます。

戻す時も同じくフガフガして戻してます。

もしも透明なマスクだったら食事中のカピバラのような顔をしていることでしょう。

kapibara-01.jpg
(参考画像)

鼻に引っかかることが多く、戻す時の方が難易度が高いです('Д')


引っかかった時はマスクのヒモのところをちょっと指で上げて直します。
そして手をアルコール消毒。

もともと診察し終わると必ずアルコール消毒するようにしているので、ご安心下さい(^-^;


というわけで変なテクニックの紹介になってしまいましたが、皆さんマスクは大事に上手に使いましょう!

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