たかむら耳鼻咽喉科

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医療系のお話の記事一覧

Posted:2017.03.23 | Category: 医療系のお話 耳

先週末3月18日(土)は夕方からまたまた勉強会。この時期は多いんです(^-^;
今回は参加者も結構多め。

その中での特別講演はTEESのお話でした。



TEESとはTranscanal Endoscpic Ear Surgeryの略です。
日本語訳すると経外耳道的内視鏡下耳科手術
簡単に言うと耳の穴から内視鏡を入れて行う手術です。

そしてこの手術では世界的に高名であり、間違いなく日本の第一人者である先生が来られ講演されました。
分かりやすい説明と手術画像、そして今後の展望まで非常に勉強になりました。


耳の手術で最も多い病気は『真珠腫性中耳炎』です。
当院のHPでも紹介していますが、この病気は基本的に手術が必要です。
『中耳炎』の項目の下の方にあります)



これまでの手術では耳の後ろをガバっと切って、乳突蜂巣と呼ばれる周りの骨をガリガリと削って中耳にアプローチしていました。

そして真珠腫の場合は再発の可能性が非常に高い病気であり、基本的に手術は2回行います。1回目の手術で病変を可能な限りすべて除去し、2回目の手術では再発があるか確認し、あれば再度摘出します。
2回目も耳の後ろをガバっと切らなくてはならないわけです。


しかし、TEESでは耳の穴から内視鏡を入れて手術をするので、もちろん傷が小さく痛みが少ないし、入院する期間も短くすみます
さらに、内視鏡の発達によりものすごく小さな病変も鮮明にとらえることができますし、内視鏡は視野が広いのでこれまでの手術ではどうしても死角になっていた場所もしっかりと操作できるようになりました。

medical_generalsurgery_system_16.jpg
こんな感じの内視鏡を使って


pic_thum_g151.jpg
こういう器具をいろいろ使って操作します。


この手術の構想自体は昔からあったそうですが、最近の内視鏡とモニター技術、そして手術器具の発達によって一気に進化しました。
(最近では手術モニターも4K画質なんてものがあります)


熊本でも3年位前から熊本大学病院で行われており、私も数十回は手術に入りましたが、病気の状態によっては手術時間も非常に短く、術後が明らかに楽です。


病変の範囲や位置によっては内視鏡だけで手術ができないこともあり、その時にはやはりガバっと耳の後ろを切ることもありますが、この手術は間違いなく今後世界中で広がっていくと思います。というより既にかなりの勢いで広がっており、日本でもこの手術をする病院はどんどん増えています。

色々な学会でどんどん成果が発表されていますし、毎年ハンズオンセミナーという実践型の勉強会が開かれ、どんどん参加者も増えているようです。


きっと近い将来にTEESは手術を行う耳鼻科医にとって必須の技術になると思います


鼻の手術も昔は歯茎の部分をガバッと切って行っていましたが、内視鏡を用いることで飛躍的に発展しました。その流れがようやく耳の手術にもやってきました。

というわけで、次は鼻の手術についても書いてみます(^^)/

Posted:2017.03.15 | Category: お薬の話 医療系のお話 耳

3月の予定の追加です。

3月24日(金) また他院の応援のため、副院長不在になります。
申し訳ございません。なんだか最近人気者で(^-^;



んで、題名の通り前回記事で点鼻薬のことを書きましたので、ついでに点耳薬のお話を。


点耳薬はその名の通り、耳の中に差す液体のお薬です。

taribiddo.jpg
目薬みたいな感じですね。

抗生剤が入ったものや、ステロイドが入ったものもあります。

特に、一番使用されているのはこの『タリビッド点耳薬』という抗生剤入りのものでしょう。

中耳炎に使用されていることがほとんどかと思います。


先に結論を言います。

〇〇〇中耳炎に点耳薬は意味がありません



先に結論を言っておいて引っ張っていくスタイルです(^^)

まず耳の構造はこんな感じです。

mimino.png
中耳炎が起こる場所は鼓膜の奥の中耳です。
そこに炎症を起こし、膿が溜まるのです。


鼓膜は3層構造になっており、外耳道側から皮膚層、固有層、粘膜層となっています。
ちなみに直径8~10mm程度で、厚さは0.1mm程度です。

鼓膜は外耳道を伝わってきた音によって振動し、奥の耳小骨という骨に音を伝えていく働きがあります。


そしてもう一つ重要な働きとして、外耳道からの異物を中耳に入れないという防御壁のような働きもあります。

お風呂にはいって耳に水が入っても鼓膜に穴が開いてなければ中耳まで入り込むことはありません。
鼓膜は完全防水仕様です。
そうじゃなきゃプールやお風呂に入る度に中耳炎になっちゃいます。


結論をちゃんと言います。

鼓膜に穴が開いていない中耳炎に点耳薬は意味がありません。


点耳薬が鼓膜にガードされて中耳まで到達しないのだから当然ですね。

点耳薬が効果を発揮するのは『外耳炎』『慢性中耳炎』『(鼓膜切開後などで鼓膜に穴が開いている)急性中耳炎』です。

点耳薬を意味もなく続けてしまうと、もちろん耐性菌は増えますし、耳の中にカビが生えることもあります(外耳道真菌症)。



ついでに、お子さんが中耳炎になり、痛がっている状態で点耳薬は無駄です
痛がっているということは鼓膜に穴が開いておらず、鼓膜が腫れて痛みがあるということなので。


耳漏(耳だれ)がたくさん耳の中から出ているときもあまり意味がありません。
耳漏に邪魔されて点耳薬が奥まで入っていきません。
耳漏をしっかりと『耳鼻科で』掃除することの方が何十倍も重要です。(ご自宅ではしないでくださいね(^-^;)



だいぶ前に赤十字病院に勤めていたころ、救急や小児科の医師に『点耳薬はどういう時に使えばよいか?』などなど色々質問をもらい、講義までしたことを思い出しながら書いてみました。
懐かしいな~(遠い目)

Posted:2017.03.13 | Category: お薬の話 医療系のお話 鼻

何度も書きますが、今年の花粉はホントに猛威を振るってます(^-^;


さてさて、アレルギー性鼻炎に対して点鼻薬(鼻スプレー)は非常に有効です。

状態によっては飲み薬ではなく、点鼻薬だけで十分に症状もなく過ごすことができます。
ただし、以前に『市販の点鼻薬はおすすめしない』と書きました。



では、市販のものと病院で処方される点鼻薬の違いはなんでしょう?

 

病院で処方する点鼻薬は基本的に『ステロイド』が入ってます。
ステロイドについては前回の記事で詳しく書きました。


強いお薬で副作用が心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんど鼻の中だけで効果を発揮するので、全身的な副作用はほぼありませんし、効果も確実です。



最近処方する点鼻薬では『ナゾネックス』『アラミスト』『エリザス』といった種類があります。

点鼻薬は刺激があって苦手!という方も多いですが、刺激はなるべく抑えてあります。粉末状のエリザスは刺激がさらに少なく、液が垂れてきてお化粧が崩れたりすることもありませんので、女性に好評です。
刺激が少なすぎて使った感じがなくて嫌いという人もいますが(^-^;




一方、市販の点鼻薬にはほぼ『血管収縮薬』が入っています。

鼻の粘膜は血流が豊富ですので、血管を収縮させると一気に鼻が通ります。

これだけ書くととても良いお薬のようですが、問題なのは連続して使ってはいけないということです。

血管収縮薬なんて効果はせいぜい数時間です。効果が切れると血流が再開し元に戻っちゃいます。そして繰り返し使っていると『リバウンド』が起こります。つまり、逆に血管が拡張し鼻づまりが悪化します。延々と使い続けないといけないような『依存症状態』になってしまいます。

 

いちおう、注意書きで『1週間以上連続して使用しない』などと書いてあるようですが、1週間で収まるアレルギー性鼻炎って、あんまりありませんよね。

現在流行りだしているスギ花粉だって2月から4月くらいまで続きますし、ハウスダストアレルギーなら1年中続きます。


 

『鼻アレルギー診療ガイドライン』には血管収縮薬入りの点鼻薬は重症・最重症のアレルギー性鼻炎に対して『治療開始時の1~2週間に限って用いる』という位置づけになっています。

ただ、他のお薬で十分に抑えられるので、私自身は処方したこともありません。



と、いうわけで忙しくて病院に来れないという方も市販のお薬を使うなら短期間のみで。なるべくなら血管収縮薬が入っていないものを選びましょう。

そしてすでに依存症のように使用している方は一度ご相談ください(^^)/
まずはその点鼻薬を中止することから始めましょう!

DSC_1373.JPG
これはアラミストという点鼻薬のサンプル品

Posted:2017.03.10 | Category: お薬の話 医療系のお話 鼻

花粉症最盛期を迎えておりますが、やはり今年は花粉が多いせいで症状も強いです!

毎年は市販のお薬で対応していた方も『今年は効かない!』と受診されるケースが増えております。

というわけで、私も最近まで使っていたステロイドと花粉症とからめたお話です。


ステロイドは耳鼻科の関係で言うと...

『耳が聞こえなくなった(突発性難聴など)』⇒ステロイド

『においがしない(嗅覚障害)』⇒ステロイド

『口内炎がひどい、繰り返す(難治性口腔咽頭潰瘍)』⇒ステロイド

『顔が動かしにくくなった(顔面神経麻痺)』⇒ステロイド

などなど、使うことは結構あります。


『ステロイド』というのは、副腎皮質ホルモンと呼ばれるものの1つです。
体の中の炎症を抑えたり免疫力を抑制したりする作用があります。

アレルギーを抑える作用も非常に強力です。


もちろん耳鼻科以外にもたくさん使われている非常に有用なお薬ですが、副作用もたくさんあります。

代表的なものとしては

・易感染性(免疫力を抑えるので、感染症にかかりやすくなる)
・糖尿病の悪化
・高血圧
・消化性潰瘍
など

そして長期的に使用すると

・骨粗鬆症
・白内障
・中心性肥満、満月様顔貌(ムーンフェイス)
・副腎不全

といった重篤な副作用が問題になってきます。


膠原病などの内科的疾患で使用するときはかなり長期間使用し続けることが多いですが、耳鼻科で使用するときは長くても1か月以内で終わることがほとんどなので、副作用が大きな問題になることは多くありません。
しかし長期間使用する場合はこまめに副作用のチェックが必要です。


ただ、例外として『セレスタミン』というお薬が耳鼻科でよく使われます。
このお薬は抗ヒスタミン薬(ポララミン)とステロイドの合剤です。

よってアレルギーに非常に良く効きます。ポララミンという古い抗ヒスタミン薬のせいで眠気も強いですが(^-^;


調べてみると、1966年発売。すでに50年以上使われ続けているお薬なので、効果は間違いないということですね。
ただ、少量ではありますが、ステロイドが入ったお薬ですので、長期間の使用は避けるべきです。

つまりセレスタミンは花粉症、アレルギー性鼻炎の治療においてはメインのお薬にはなりません


ついでに言うとポララミンというお薬も第一世代と言われる抗ヒスタミン薬で、眠気の誘発や認知学習能力、集中力の低下に影響する薬剤です。
抗コリン作用と呼ばれる副作用(口が乾く、頻脈、尿閉)もありますので、アレルギー性鼻炎に対しては日本だけでなく、欧米のガイドラインでも『避けるべき薬剤』とされています。



他県から熊本に移ってきた耳鼻科医が『熊本に来て一番驚いたのは、セレスタミンを使いすぎていること』と言っていました。

ステロイドを過度に怖がる必要はありません。
特に点鼻薬や喘息で使う吸入薬にもほとんどステロイドが入っていますが、全身的な副作用の心配はいりません。
(ただし、点鼻薬にも長期的に使ってはいけないものがありますので、それは次回にでも)


ただ、アレルギー性鼻炎・花粉症でセレスタミンを何か月も使うようなことは明らかに良くありませんので、気を付けましょう。

いまは他にもたくさんいいお薬がありますからね~(^^)/

Posted:2017.03.06 | Category: お知らせ 医療系のお話 耳

花粉症も最盛期を迎えている今月の予定です。

3月8日(水) 他院での診療のため、副院長不在
3月20日(月) 春分の日 休日当番医 9:00~17:00

となっています。
相変わらず他院によく呼ばれております(^-^;



そして私の突発性難聴ですが、結論から言いますと、しっかり治ったようです。

時々ふと違和感があるような感じもありますが、無視しています(*´з`)

聴力検査もしっかり正常になりましたから、問題ないでしょう!
お薬もきっちり飲みきり終了となりました(^^)/

あとはまた悪くならないように祈るばかりです。


前にも書きましたが、自分の専門の病気になるとは、、、
特に低音障害型突発性難聴と言われる病気は突発性難聴の中でも1割弱程度。
突発性難聴の発症は10万人に60人程度(2012年調査)。


ちなみに耳鼻科医は日本に約9000人。
ということは、単純に計算すると突発性難聴になった耳鼻科医は日本にいても数人程度。
低音障害型突発性難聴となるとほとんどいないでしょう。


『日本で一番突発性難聴の気持ちが分かる耳鼻科医』とでも名乗ろうかな(^-^;

Posted:2017.03.01 | Category: 医療系のお話 耳

もう3月ですね!

やはり今年は花粉の量が多いためか、去年は全然花粉症の症状がなかった方も多く受診されています。

そしてアレルギーの検査も多くの方が希望され、どんどん検査しています。
やはりアレルギーの治療の基本は『敵を知ること』ですからね!



はてさて、発症から1週間経過した私の突発性難聴です。


昨日あたりから症状も明らかに改善してきました(^^)
注意して聞くとやはり若干違和感があり、耳鳴りも少しありますが不快感はかなり軽減。

で、聴力をチェック

DSC_1364.JPG

おぉ、ほとんど治ってる!!
(是非前回の記事と比較してみて下さい)

でも聴力検査中に気づきましたが、やっぱり音が若干割れて聞こえるようで『ピー』という音が微妙に割れて『ビー』という感じです。
(わかりづらい表現ですが(^-^;)


いづれにしても順調に治ってくれているので、ステロイドは予定通り減らしていきます。
明日から10mgにして5mg→終了という流れです。


突発性難聴は早期発見、早期治療が最も重要です
私はもちろん病気に対する知識を持っていて、発症して2日後から治療を開始できましたから、回復も早かったのでしょう。

それでも最初は『鼻が悪いからかな?』とか思って放置しちゃいました
証拠も残っちゃってます(^-^; ⇒ 前々々回の記事


突発性難聴は軽度だと耳の違和感や耳がつまった感じがする程度の症状のことがあります(実体験)。

そういう時は放置せず、必ず耳鼻科受診を!

Posted:2017.02.27 | Category: 医療系のお話 耳

前回⇒突発性難聴になった耳鼻科医日記


2月22日から右耳の突発性難聴を発症して2月24日から治療を開始。

非常に美味しくない薬をなんとか飲みつつ仕事もしております。
前回はメニレットゼリーのマズさを強調しちゃいましたが、プレドニゾロン(ステロイド)も結構苦い(*_*;


仕事中はそこまで問題ないですし、なんとなく慣れてきましたが、やはり不愉快( 一一)
一日中『ボ~』って感じの耳鳴りもなってるし、音楽を聴いていても明らかに低音が欠けている感じ。
ベース音が好きなのにな~(:_;)


そして本日2月27日朝起きるとなんだか耳鳴りが大きいような...
ん~聞こえもさらに悪くなってる?


で、簡単に聴力検査

DSC_1355.JPG

2月24日  ←    →  2月27日
(〇印がついた線が右耳の聴力で、線が下に下がっていると聴力が落ちているということです。
グラフの左側が低い音で、右にいくと高い音になります。)

おぉ、検査では良くなってる!?


不快感はむしろ増してるんだけどな~(^-^;
確かに同じ病気の患者さんでも症状が悪くなっても検査では良くなっているということはよくあるけど。

とりあえず検査結果は良くなってるので、一安心。
治療開始から早期に改善がみられると、その後もきっちり良くなってくれることが多いです。

明日からはステロイドの量も30⇒20mgに減量して経過をみます。


いや~しかしこの不快感は経験してみないとなかなかわかりませんな。
今度から患者さんに『もっと』親身になれるかもと前向きに考えています(^^)


前回も書いたようにこの病気はストレスなどが原因になる言われています。
病気のことを色々考えすぎても仕方ないので、気楽に考えています。
治療はしっかりしているので、なるようになるしかないですしね。


そんな性格なので実際にはストレスフルな自覚はないのですが、病気を言い訳に楽しいことがないかと探し中。
今日は美味しいものでも食べに行きたいもんです(^^♪

...お酒は控えめにしときますが(^-^;

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