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Posted:2024.10.04 | Category: 医療系のお話
今回はしっかり医療系の真面目な話です。
最近よく聞く『マイコプラズマ』。なんだか流行しているとニュースでも話題になってますね。
当院でも最近時々診断します。
ただ、熊本ではそこまで流行ってないようで
(NHK感染症データと医療・健康情報より)
感染状況では全国44位。
爆発的な流行までは至ってないようです。
・そもそもマイコプラズマとは?
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌が病原体です。
一般的な風邪はほぼウイルスが原因ですが、マイコプラズマは細菌というのもポイントですね。
そして名前のまんまですが、肺炎の原因となることがあります。
以前はオリンピックの年に流行すると言われていましたが、最近はその法則は崩れているようで時折流行します。
好発年齢は6~12歳の子どもと言われており、患者の8割が15歳以下とされていますが、大人でも感染することはあります。
・症状は?
マイコプラズマに感染すると2~3週間という長い潜伏期間のあとに発症します。
典型的な症状は発熱、倦怠感、咳などです。特に咳が長く続くことが多いのが特徴と言われていますが、普通の風邪でも咳が長引くことはありますので症状だけで診断することは困難です。
症状にはもちろん個人差があり、軽い咳などの症状だけで終わることもあります。
肺炎まで起こしてしまうのは5%以下と言われています。
・診断は?
一般のクリニックではマイコプラズマの抗原検査を行うことが多いと思います。検査キットがあるのでのどを綿棒で擦って検査します。15分ほどで結果が出る便利な検査ですが、やや感度が低いという弱点があります。
血液検査で調べる方法やLAMP法という核酸を検出する方法もありますが、こちらは時間がかかるという弱点があります。
症状や経過、身体所見、検査所見、周囲の流行状況なども加味して診断をしていくことになります。
・治療は?
マイコプラズマは『ウイルス』ではなく『細菌』なので抗菌薬が効きます。ただ、一般的な細菌とは違い『細胞壁』という構造がありません。なので『細胞壁』とターゲットにするβラクタム系抗菌薬は効果がありません。
βラクタム系抗菌薬はペニシリン(ワイドシリン、サワシリンなど)、セフェム系(メイアクト、フロモックスなど)といったものです。
治療薬の第一選択は『マクロライド系』と呼ばれる抗菌薬とされています。
クラリスロマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシンなどがこれに当たります。
ただ、すっごくにがいんです...
もちろん、錠剤やカプセルなら問題ないのですが前述したようにマイコプラズマは子供に多い病気です。
粉薬になるとめっちゃにがいです。
一応、コーディングして苦みを感じにくいようにしているようですが、大人が飲んでもかなりキツい苦味なので子どもが処方されたけど飲めなかったという話は珍しくありません。
甘味のあるアイスやココア、練乳などと一緒に飲むと苦味がやわらいで飲みやすいようです。
逆に酸味のあるような柑橘系のジュース、ヨーグルトなどは更に苦味を強めてしまうので避けた方が良いと思います。
また、マクロライド系は耐性化が進んでおり、2012年の日本国内の報告ではなんと9割のマイコプラズマがマクロライド耐性を持っていたという報告もあります。その後は耐性率がやや低下し2019~2020年では2~3割程度だったようです。
ガイドラインでは今でも第一選択はマクロライド系抗菌薬となっています。
2日以上経過して改善がなければニューキノロン系(トスフロキサシンなど)やテトラサイクリン(ミノマイシンなど)に変更します。(ただし、ミノマイシンは8歳以下は禁忌となっています。)
ここまで治療について書いてきましたが、『マイコプラズマは絶対に抗菌薬が必要な病気ではない』ということも重要です。
マイコプラズマは自然治癒することが多いと言われており、肺炎や気管支炎の様な症状がなければ治療は不要という意見もあります。
・予防について
マイコプラズマは接触感染、飛沫感染で広がります。
予防には基本的な手洗い、うがいの他、感染者との接触を避けることも大事でしょう。
以上、長々とマイコプラズマについて書いてみました。
マイコプラズマが流行しているとはいってもインフルエンザや新型コロナような爆発的な流行を起こすことはないと思われます。
久しぶりの真面目な長文でした。
なんだかインフルエンザも少しずつでてきているという不穏な噂もありますが、皆さんお気をつけて(^^)/
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