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つい先日、『新型コロナ感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)』という資料が厚生労働省より発表されました。
ちなみに誰でもweb上で見ることができます。
もともと『新型コロナ感染症診療の手引き』という資料が定期的に更新されており、新型コロナの診断、検査、治療などなどについてまとめられています。
今回、それの別冊で罹患後症状についてのデータや治療方針などについてまとめられました。
罹患後症状とは、簡単に言うと『後遺症』ですね。
その中から、切り抜くと。
新型コロナ感染、発症後2か月、もしくは回復後1か月経過した時点で72.5%の方が何らかの症状の訴えがあり、最も多いのは倦怠感、次いで息切れ、嗅覚障害、不安、咳、味覚障害と続きます。
で、耳鼻科の専門領域で言うと、やはり嗅覚・味覚障害です。
最近相談を受けることも多いです。
ちょっと古い記事ですが、嗅覚障害については
⇒コチラのブログをご参照ください。
嗅覚障害について、新型コロナ感染早期から認められることが多いのは多数の報告があります。
1か月以上嗅覚障害が続く場合、CTやMRI検査をしても異常ないことが多く、逆に早期に改善する場合は単純に鼻の粘膜の腫れなどで鼻がつまって嗅覚障害を起こしていることが多いようです(気導性嗅覚障害)。
異臭症と呼ばれる『違う匂いに感じる』『全部の匂いが同じに感じる』『何もないのに匂いを感じる』症状も頻度が高いとされています。
基本的に新型コロナ感染後長期的に続く嗅覚障害は普通の風邪による『感冒後嗅覚障害』と同じような病態のようです(嗅神経性嗅覚障害)。
味覚障害については、嗅覚障害を伴う頻度が多く味覚障害単独の頻度が低いこと、味覚検査を行うと正常の結果となることが多かったことから新型コロナ感染後の味覚障害の多くは嗅覚障害による『風味障害(においが感じないことで味がわからない)』と考えられています。
では、治療については...
この資料には特に記載はありません。
もちろん自然回復は十分期待できるものですから、1か月程度は様子をみて問題ないと思います。
診察の上、ファイバー(カメラ)を用いた鼻の中を観察し、特に匂いを感じる場所(嗅裂)がちゃんと通っているか確認。
においの検査も必要に応じて行い、嗅覚障害が気導性なのか、嗅神経性なのかを鑑別することも大事でしょう。
で、治療については?
感冒後嗅覚障害と同様の病態だと考えるとある程度手段は限られてきます。
治療としては
・当帰芍薬散などの漢方薬
・嗅覚刺激療法(においのリハビリ)
この2つは有効だと考えています。
嗅覚障害に対してよく行われるステロイドの点鼻については、基本的に気導性嗅覚障害の治療と考えます。
鼻の中に炎症を起こしているような所見があれば使用を検討して良いかと思います。
味覚障害については前述したように嗅覚障害に伴う『風味障害』という部分が大きいようです。
なので嗅覚障害が改善すれば良くなっていくハズですが、嗅覚障害がなく味覚障害のみの場合は他の原因も考えなくてはなりません。
味覚障害で多いのは亜鉛欠乏によるものです。血液検査で調べてみるのは必要かもしれません。
新型コロナ感染が亜鉛欠乏の直接原因になるかと言われると...ないかもしれませんが。
残念ながらこれらの嗅覚味覚障害はこれまでもたくさん研究されてきた分野ですので、今後『新型コロナ後の嗅覚障害』に特化したような治療法やお薬などがすぐに開発される可能性は低いかと思います。
正直な話、治療を行ってもすぐに治ることは少ないと思います。
数か月単位での治療になることが多いと思いますし、絶対に良くなるとも言いづらいです。
ただ、当たり前ですが味覚も嗅覚も非常に大切な感覚ですので、少しでも回復の助けになればと思い治療していますm(__)m
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