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前回に引き続き聴覚情報処理障害(APD Auditory Processing Disorder)についての話です。
前回書いたようにAPDに確実な診断をするということは大変です。
では、診断がついたとしたら、治療は?
結論から書いてしまうと『治療法』というものは現在確立されていません。
なので、いかに『聞き取れない』という状況を減らすことができるかが重要だと思います。
いくつか有効と言われている方法をご紹介します。
①周囲の環境を整える
APDで最も多い症状が『騒音の中で聞き取りが悪くなる』というものです。
職場ではなかなか難しいかもしれませんが、なるべく静かな環境にするということは大事です。
話し声、椅子をひく音、テレビの音、本をめくる音などなど騒音は様々です。全部なくすことは難しいですが。
特に私が大事だと思うのは、周囲の理解を得るということです。
学校では前の方の席で授業を受けるなど。
職場で指示が聞き取れないことが多ければ、指示をメモに書いてもらったり、騒音の少ない場所での仕事にしてもらったり。会議では授業と同じように聞き取りやすい位置にしてもらったり、色々方法はあるかと思います。
もちろん職業によって難しいこともあるでしょうけど、職場の方と一緒に解決法を探すことができればと思います。
これまで当院に受診された方で希望された方には職場に診断書というより意見書(そもそも診断が難しいので)のような形で病状を説明する書類をお渡しもしてきました。うまく活用していただければと思います。
②色々な道具を使う
『FM補聴システム』というものが有効とされている報告があります。
簡単に言うとトランシーバーのような感じで、特に学生さんで授業を受けるときに教師が送信機(マイク)をつけて、レシーバーを通して授業を聞くという形です。
ただ、このシステムは不特定多数が話し手になる職場では活用しにくいですね。
他にもノイズをカットするような耳栓を使ったり、電話であればノイズキャンセリングイヤホンをつけて聞くという方法も良いそうです。
聴覚以外から情報を得るということで、視覚を使うメモやメールなどをうまく活用するのも良いでしょう。
いまでもありますが、音声を文字化するツールがもっと実用レベルになればいいなぁと思っています。
③聴覚トレーニング
簡単に言うと正確に言葉を聞き取るための練習です。
これも色々種類があり、欧米では訓練用のソフトもあるそうです。
簡単な訓練であれば歌や文章を聞いてそれを書きだしたり、音に対する集中力をつけるために特定の単語を指定して音声の中でその単語を聞き出したりする訓練があります。
ただ、前回のブログで書いたような色々な検査を受けた上で、特に聞き取りにくい音のパターンを解析してそれに合わせた訓練を行うことが大事なようで、そこまで考えるとまだまだ一般的ではないかと思います。
また、成人ではなかなか効果がでないという意見もあります。
というわけで2回にわたってAPDについて書いてきました。
なかなか難しい病態で、これからもっと色んな診断方法や対処方法ができるのを期待しています。
熊本市の耳鼻咽喉科 たかむら耳鼻咽喉科
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